『歎異抄』とは
—善人なおもって往生を遂ぐ、
いわんや悪人をや—
なぜ、善人よりも悪人なのか。
なぜ、この世に、まことは一つもないと断言できるのか。
『歎異抄』には、親鸞聖人の衝撃的な言葉が、数多く記されています。
それは、世界の哲学者・文学者にも多大な影響を与えたものばかりです。
『歎異抄』の謎が解けた時、私たちの幸せ観、人間観、仏教観は、一変するでしょう。
地震、洪水、飢饉、戦乱、大火……。
親鸞聖人の800年前は、生きる不安の絶えない時代でした。
人間とは?
命とは?
幸せとは?
苦しみ悩む人々へ、親鸞聖人の答えが記された書、それが『歎異抄』です。
「人類みな兄弟であり、上下などまったくない」
「善人でさえ浄土へ往生できる、まして悪人は、なおさらだ」
「この世のことすべては、そらごとであり、たわごとであり、まことは一つもない」
親鸞聖人の言葉は、衝撃的です。
そして、絶望的な状況にあっても、
「冷酷な運命に甘んじて従うのではなく、自ら未来の幸せの種をまくことができる」
と強く押し出すメッセージが、日本人の精神的な支えとなり、幾多の災害、戦乱の中から、立ち上がらせてきたのです。
平成23年、日本は、未曾有の大震災に襲われました。今も、混乱のただ中にあります。
たとえ建物のガレキを取り除くことができても、心の不安はなくなりません。
そんな今だからこそ、日本人に生きる力を与えてきた『歎異抄』を開いて、人生を見つめ直してみませんか。
誤解に満ちた歎異抄
善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。
(善人でさえ、浄土へ生まれることができるのだから、ましてや悪人は、なおさら往生できる)
これは『歎異抄』3章の一節です。日本の古典で、もっとも知られる一文でしょう。
歎異抄の構成
『歎異抄』は18章から構成されています。
1章から10章までは、親鸞聖人の直のお言葉を、そのまま記したものとなっています。
11章から18章は、その聖人の教えをもととして、当時流布していた異説の内容と誤りを、『歎異抄』の著者が正したものです。